当会理事長新野幸次郎氏退任、後任に高崎正弘氏が就任 ―退任・就任メッセージはこちらをクリックしてお読みください

新野 幸次郎 前理事長 高崎 正弘 新理事長
母校と凌霜会の飛躍を祈りつつ
(社)凌霜会理事長退任の辞
新野 幸次郎
国立大学神戸大学が、国立大学法人神戸大学になって満四年になります。かつて文科省の方針通りにしか運営できなかった官庁組織の神戸大学は、いまや二千億円を少し上回る総資産を運営する、かっこつきの自立経営体になりました。もっとも、旧帝大との格段の差は、従来何回となく私が凌霜誌でふれましたようにそのままです。すなわち、個々の学部規模も大きく、しかも、自然科学系、医学系などの研究所を十以上も持つ東大や京大などに比べ、研究所が経済経営研究所一つしかない神戸大学は研究者の数だけでも旧帝大に比べて格段の差があります。総資産を一兆三千億円強も持つ東京大学などに比べると、学生一人当たり教育費や教員一人当たり研究経費でも大変な差を持ったままです。しかも、法人化によって、大学間格差は、その資産運営の仕方如何で、文科省予算とは独立に毎日毎日変化してまいります。国立大学法人の運営の仕方一つで従前の大学間格差が拡大したり縮小したりする可能性も出てきました。これは大学経営の根本的な変化です。
おまけに、十八歳人口が激減した中で、国内の私学を含む大学間競争が激しくなるだけでなく、何よりも、グローバリゼーションの展開で国際的な大学間競争がより激化してくることになりだしました。ちなみに、東京大学は優れた国内外の大学院生を集めるために、大学院生に対する授業料をなくするような手だてを工夫するようになりましたが、米国のいわゆるアイビー・リーグ(東部名門私立大学)は、単に授業料免除だけでなく奨学金まで出して優れた大学院生を選抜するようになってきました。また、EUの名門大学の中には、単に英語で授業するだけでなく、例えばそれぞれのビジネス・スクールの卒業生を米国よりも高給で就職斡旋することまでやるようになってきました。
このような状況の中で神戸大学全体が国際競争力を確立するためには、今後とも大学全体で抜本的な体質改善に努めなければなりません。仮に、全体として困難を抱えていたとしても、せめて、従来、わが国の中では神戸高等商業学校以来、社会科学の殿堂として代表的な地歩を占めてきたわが母校の法・経済・経営の三学部を軸とする六甲台社会科学系五部局だけでもその地歩の向上・発展を希求する凌霜会員の多いことは何人も疑う余地がありません。そのためには、各部局は、カリキュラムなども根本的に検討し、それに合格した学生諸君が、他大学卒業生とは格段の違いを自覚できるようにするだけでなく、強度な社会活動意欲を持つ学生諸君を生み出すようにしなければなりません。それを可能にするためには、何よりも優れた研究能力と強い教育意欲を持つ卓越した先生方を一人でも多く充実することが不可欠です。
凌霜会は、残念ながら自主経営体になった国立大学法人神戸大学全体を完全に支援できるほどの能力を持っていません。それどころか、最近の会費納入動向、会員数の変化などを見ると凌霜会員各人が卒業した出身学部の補強と支援を保障するだけの能力をも欠いています。しかし、大学がユニバーサル化した中で、国の内外で競争が激しくなり、しかも、最初に述べたように、大学運営の根本原理が変化した今日、凌霜会は従来とは全く異なった在り方を考えなければならなくなってきました。いま国立大学法人全体の運営は、学長をトップ経営者とする理事会と、経営協議会と国立大学時代の評議員会に当たる研究教育評議会とで運営されています。理事会や経営協議会には民間人もしくは外部の人を加えることが出来ますが、しかし、各学部段階の運営は根本的に変わっていません。幸い社会科学系五部局には、財団法人神戸大学六甲台後援会が五十年の歴史を持って存続し、その研究・教育活動を多少とも支援してきました。しかし、法人化の中で、難しい運営を迫られているわが神戸大学の場合、母校社会科学系五部局の伝統的水準の確保とその一層の発展を図ろうとすれば、凌霜会の強化を通じて六甲台後援会の充実を図ることが不可欠の課題となります。
そのような重大な時に、私は十年前に凌霜会理事長の大任を任されることになりました。幸いにして、皆さんの母校愛とそれを達成しようとされている役員、事務局員の皆さんと、何よりも会員の皆さんのご支援で、まがりなりにも今日までその職を続けることが出来ました。しかし、「凌霜」誌一つを例にとっても、皆さんから多様なご批判を受けてきました。新しい編集委員に東京在住者からも参加して貰うようにし、編集委員長制度を新たに設けるようにしたのもそのご批判に応えるための一助でした。また何よりも会員減は、組織存続の可能性に疑念を持ち込む要因ともなりました。そのために、学内部局長の先生方とも何回か相談し、ゼミナールでのご検討をお願いするとともに、ボランティアとして参加して頂いている事務局員をも含む全事務局員の真摯なご活動をお願いしてきました。私自身も機会がある度に、卒業生の皆さんに入会をお願いしたり、「凌霜」誌で会員増を呼び掛けたりしてきましたが、しかし、申し訳ないことに根本的な改善策は見出すまでには至っていません。
学長時代はもちろん、凌霜会理事長になってから、私個人も各支部に出来るだけ出席するようには努めてきました。もっとも、一、二の支部はその地域の特性で、凌霜会員以外の学部卒業生が少数で、各自学部の同窓会をつくることが出来ない方々の願いもあって、凌霜会支部ではなく、神戸大学学友会支部となっているところも出てきました。しかし、これからは凌霜会活動の一層の活発化のために、全国、および全世界各地にこうした支部活動を強化していくことも望まれます。
唯一、若干の前進を見出せたのは、六甲台後援会補強のための募金のお願いと、それに伴ういくつかの施策実行です。先に述べたような五部局活動の支援強化のために、私がこの五年間お願いしてきました募金には、幸いにして私個人が親しくしてきた先輩・友人の皆さんを中心とするご協力もあって、今日までに二億円ほどの目標を達成することが出来ました。その度に「凌霜」誌の「六甲台後援会だより」で報告して頂きましたが、本当にありがたいことであります。
そのお蔭で、今年はじめて、六甲台後援会で成績優秀な三学部学生九名(各学部の二・三・四年生中、成績優秀な人)と四大学院生八名(各研究科の博士課程前期課程学生中、成績最優秀の人)にそれぞれ六十万円の「凌霜賞」を授与することが出来ました。これ以外にも、詳しくは、凌霜誌「六甲台後援会だより(十三)」に報告されているように、大学院博士課程後期課程在学生の在外研究活動への支援と、三学部でのそれぞれ他学部必須科目履修奨励のための援助費などを支出出来るようになりました。もっとも他大学、特に一橋大学や東京大学などの措置に比べるとまだ格段に少なく、さらに補強が必要ではあります。しかし、これも皆さんのご協力のお蔭です。ご協力と言えば、現在、大学全体では神戸大学基金を三十億円を目標にして募金中です。その中の呼び掛けの一つに、六甲台講堂の改修があります。現在中山正實画伯の見事な壁画は残っていますが、あの講堂には冷暖房もなく、設備も不十分です。神戸大学には、四百人ほど収容出来る大教室は複数ありますが、しかし、残念ながら六百人を超える人達を収容し、そこで同時通訳も出来る施設を整えた講堂はありません。施設部の計算によると、これを改修するのには四億円強が必要なようです。ところが皆さんに呼び掛けさせて頂いて講堂改修用として今日までに頂いた金額は約五千万円しかありません。このための募金活動も残された大きな課題の一つです。皆さんぜひご協力をお願いします。
こうしてお話をしてきますと、私は実に無力な理事長でした。かつて後藤新平は、金を残して死ぬのは下、仕事を残して死ぬのは中、人を残して死ぬのは上と申しました。私は金は残せませんでしたが、やり遂げていない仕事だけはたくさん残して退任します。しかも、それでもたった一つだけ皆さんに誇ることが出来ることがあります。それは、立派な後継者に引き継いで頂けることです。後を引き受けて下さる高﨑正弘理事長は皆さんご承知のように、ひとり実業界でリーダーとしてご活躍、輝かしいご業績を上げられただけでなく、凌霜会でも長年に亘って副理事長として補佐して頂きました。また、法人化後の神戸大学の経営協議会委員として、さらに理事としてもお務め頂きました。私は皆さんが新理事長のもと、凌霜会と母校の一層の発展に力を尽くして下さることを祈念して退任のごあいさつとさせて頂きます。ありがとうございました。
就任に当たって
高崎 正弘
大勢の諸先輩がおられるなかで、永く、輝かしい歴史を有する「凌霜会」の理事長職をお引き受けすることには率直に言って戸惑いもありましたが、皆様方のご支援をいただきながら、凌霜会の更なる発展に微力ではありますが全力を尽くして参りたいと思っておりますので、何卒宜しくお願い申上げます。
ご承知のように、今、国立大学法人は大きな変革の流れの中にあります。運営交付金の毎年の減額、競争的資金のウエイトの高まりの一方で、教育・研究内容や財務状況等が定期的に第三者の目で評価され、その結果がその後の国からの支援に反映されるという、勝ち組、負け組の選別が否応なく進む環境に身を置いております。
勿論、大学経営の舵取りは学長はじめ理事の先生方の職務ではありますが、我々同窓会もそれなりの役割を果たしていかなければ、この厳しい環境を母校神戸大学が乗り越えて行くことは難しいと考えております。
一方で、同窓会の健全な姿なくして母校への貢献が画餅に終わることは申すまでもありません。
課題は多々ありますが、当面急ぐべきテーマは、過去2年間続いている経常収支の赤字改善と、この12月から施行される新しい公益法人制度への対応であります。
収支改善の原点は「入るを図って出を制す」にありますが、凌霜会事務局の現状は、関係者のご好意によって運営されている部分が少なくなく、経費節減努力の一方で、会員の増強と活性化による収入の増加を基本にしなければならないのが偽らざる現状と認識しています。
ポイントは、凌霜会事務局や六甲台五部局関係者が、現役・卒業生を問わず凌霜人との接触の密度を高めていく、その具体策であります。
早い機会に、各地の代表者にも出来る限りご参加いただき、プロジェクトチームを発足させたいと考えています。
検討内容はスマートなものが好ましいことは言うまでもありませんが、やや泥臭いとご批判をお受けするようなところまで徹底することも覚悟しなければと思っています。
もう一点の「新しい公益法人制度」に関しては、今年の12月から、我々も新しい法律に基づくより厳格な運営が求められます。
理念としては、株式会社以上のガバナンスが要求されるとも言えましょう。
理事の選任方法や理事の過半数が理事会に顔を揃えるための環境整備など、課題は多くあります。
新制度への完全移行までには5年間の暫定措置がありますが、出来る限り早めの対応で万全を期したいと考えています。
幸い、凌霜会と六甲台後援会の合同検討会が6月にスタート致しましたので、六甲台後援会が有する特定公益増進法人の資格維持を大前提に、凌霜会のあるべき姿をしっかりと固めて参りたいと思っています。
最後になりましたが、新野前理事長様はじめ今回ご退任された理事・評議員の皆様には、永年にわたり凌霜会を力強くお導き下さいまして誠に有難うございました。
厚く御礼申上げますと共に、今後とも大所高所よりご指導賜りますよう切にお願い申上げます。
会員皆様の益々のご健勝と母校の一層の発展を祈念しつつ。