答案の落書きの内容は種々雑多である。一橋大学学生だった石原慎太郎(現東京都知事)の芥川賞受賞作「太陽の季節」は、格好の話題であった。たとえば、こんな作品?があった。
「僕には、別荘もないし、ヨットもないし、あんなに思うままに、したいことができる生活環境にはいない。それでは、かりに、ああいう環境におかれたら、彼らと同じことをするだろうか。するようにも思えるし、やっぱり、しないようにも思う。いくらなんでも、あれでは少しでたらめすぎる。」
学生の好む落書きのテーマに”恋愛”がある。次に紹介するのは、その例。
「目下恋愛中、落書きどころではありません。そんなひまがあれば、ラブ・レターの名文句を考えます。得恋するか、失恋するか、とにかくどちらかにきまったら、大恋愛論を書きます。乞う!!御期待。」
阪神タイガースについての落書きもある。「昔も今も変わらない」という感懐を持たれるかも知れない。
「私は、プロ野球の阪神タイガースの熱烈なファンである。その熱烈さは、阪神ファンであることを誰にも知られたくないと思うほどのものである。負けたとき、ゴチャゴチャ他人から云われるのが、身を切られるほどつらいからである。しかし勝つと、つい熱狂する。そこで、私の周囲の人たちは、みな、私が阪神ファンであることを知ってしまっている」
田口寛治教授は1987年(昭和62年)に神戸大学を退官した。通算40年という長い期間での神戸大学に勤務したことになる。哲学という近寄りがたい学問を専攻した学者であったが、常に微笑を絶やさず学生に接する先生として、学生の間では人気が高く、信頼厚かった。
作成:神戸学術事業会 |