文春新書の1冊として刊行された譚璐美・劉傑共著『新華僑 老華僑ー変容する日本の中国人社会』(定価850円+税)に神戸大(工)卒業の留学生が、”新華僑”の一例として登場している。
日中交流が活発化する中で注目を集める日本の華僑社会。長年独自の位置を占めてきた彼らは、中台関係の変化、「新華僑」(注)の台頭、世代交代を受け、大きな転換期を迎えている。これが本書の問題意識。
本書には、神戸市在住の田中氏といういわゆる「新華僑」が登場する。ただし、田中というのは”仮名”である。田中氏は、広東出身で42歳。中国のエリート大学工学部の修士課程を修了して、1985年に神戸大学の大学院に留学、工学博士号を取得した。卒業後は神戸のコンピュータ企業に就職する。留学生だった中国人女性と結婚して一戸建ての家を購入し、子供も生まれた。今では会社の中堅幹部として頼られる存在になり、上海や北京などの支店をたばねる中国総括責任者となった。田中氏は仕事の利便性などから日本国籍を取得している。
田中氏のような新世代の中国人たちは、いわば現代のエリート集団を形成する。IT産業や金融など最先端職業についたり自ら会社を立ち上げたりした。そして日中両国にまたがり活躍している。
本書の著者の一人である譚璐美(たん・ろみ)さんは、1950年東京生まれ、慶應義塾大学文学部卒業。同大学講師、中国中山大学講師を経て、現在はノンフィクション作家。著書に『江青に妬まれた女 ファーストレディ王光美の人生』等がある。もう一人の著者の劉傑(りゅう・けつ)さんは、1962年中国・北京の生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。早稲田大学社会科学総合学術院教授。著書に『国境を越える歴史認識 日中対話の試み』(共編著)、『漢奸裁判 対日協力者を襲った運命』等がある。
(注)かつて、華僑の概念は─中国大陸から外国へ出て行き、重労働に耐えて生活する貧しい中国人である─というものだった。彼等の子孫は「老華僑」と呼ばれることがある。。一方、初代や二代目がややもすれば固執してきた国籍問題に柔軟に対応し、日本国籍に帰化して「華人」になった人たちも少なくない。もう一つ、1980年代以降に中国大陸から大勢の留学生が日本にやってきたことである。中国人留学生は日本の大学で高等教育を身につけた後、そのまま日本に定住したことで「新華僑」と呼ばれるようになった。「新華僑」は、IT、金融、学術研究など最先端分野の職業についたり、日本の大企業に就職して日中経済交渉の最前線で活躍をする人も少なくない。

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