地主敏樹教授(経)が、日本評論社が発行する「経済セミナー」誌(2・3月合併号、通巻 646号)に「米国の金融危機と政策対応」というタイトルの論文を寄稿している。これは特集記事「世界同時不況の時代」の、一環として寄せられたもの。特集の全体は、以下のとおり。
●特集=世界同時不況の時代
世界金融危機はなぜ起こったか 竹森俊平(慶応義塾大学)
米国の金融危機と政策対応 地主敏樹(神戸大学)
米国金融危機はEUにどう波及したか 小川英治(一橋大学)
新興国を襲った金融危機の津波 門倉貴史(BRIKs経済研究所)
米国金融危機と日本経済の行方 嶋中雄二(三菱UFJ証券)
地主教授は、昨年秋のリーマン破綻以後「アメリカ経済は急速なペースで景況悪化を示している。いまや世界同時不況となり、日本をも巻き込んだこの危機にどう対処するか。オバマ新政権の巨額の景気対策パッケージが効を奏するか、予断を許さない」との現状分析をする。
また、今後のアメリカ経済展望については、「アメリカ国内のエコノミストの予想は驚くほどに楽観的」と指摘する。フィラデルフィア連銀が昨年11月半ばに発表したエコノミスト向けのアンケート結果は、3ヵ月前と比べると顕著に悪化している。にもかかわらず、「今年はマイナス成長になると予想されているものの、第4半期から景気回復が順調になる」というのが大勢を占めている。地主教授は、「日本のバブル崩壊後においても1990年代半ばまでは1年後に景気回復という予想が強く、毎年はずれることを繰り返していたことを想起させられてしまうのは筆者だけではないだろう」とやや皮肉めいた結論をくだしている。

なお、地主教授は、2月23日付日経紙の「経済教室」欄に登場、金融危機脱出後のアメリカがとるべき金融政策について解説とコメントを寄せている。以下は要旨。
アメリカはドル建てで借金し経常赤字を賄うと共に海外資産を購入してきた。ドル価値が下落すれば、アメリカは債務を実質的に減らすことができる。日本やドイツは敗戦後ハイパーインフレで政府債務を圧縮したが、アメリカもドル価値を下落させたいとの誘惑を持つようになるだろう。しかし、ドルとユーロを除けば、基軸通貨となる通貨が見当たらず、新しい世界通貨を作ることも現実には不可能。そのような現実認識に立てば、アメリカとEUがインフレ目標政策を採用し、かつ協調的に行動する(例えば2%未満のインフレ目標)ことが、望ましいと考えられる。これはある種の複本位制で、第1次と第2次世界大戦の戦間期に英ポンドと米ドルが基軸通貨として並存していた経験を生かすことでもある。
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