同文書院「エスカベーシック」シリーズの1冊として、東京医科歯科大学河原和夫教授(1980年法卒、医学博士)の新著『社会・環境と健康』が刊行された。定価は1905円+税。
感染症による死亡や健康被害は、人類の歴史とともにあった大きな問題。近代医学はこれらを克服し、人類の寿命を大きく伸ばしてきた。とくにわが国は、太平洋戦争後、急速に乳児死亡率や平均寿命などの健康指標が改善され、世界有数の健康大国となる。
感染症はある程度制圧した。しかし、日本国民を含む全人類は、新たな健康問題に直面している。少子高齢社会に起因する健康課題がそれである。ことに高齢者が増えたことにより、がん、心臓病、脳卒中などの疾患が増加をみた。これらは生活習慣の影響を強く受けるため、日常生活習慣の改善が重要である。つまり、栄養・食生活、運動習慣、喫煙および飲酒習慣の改善や良好な睡眠の確保、適度な休養をとることが必要である。
国民がおかれている健康状態は、国によって事情が違う。わが国のような先進国では生活習慣病が健康問題の主体。一方、サハラ以南のアフリカ諸国ではHIV等の感染症に苦悩している。こうした相違は、それぞれの国々の国力、教育レベル、医療水準、人を取り巻く環境、さらに社会保障システム等の大きな影響を受けているといえよう。
以上のように、国によって健康課題やその解決方法に、違いがある。そこで、明治維新以来近代化に成功し、その後戦争により国土は荒廃したものの、戦後の復興、高度経済成長を成し遂げ、国民の健康水準や生活水準を向上させたわが国の手法に対して、世界の注目が集まってきている。本書は、このように多様な社会・環境と人の健康にかかわる問題を多面的に捉えるとともに、科学的な理解が得やすい形で体系化されたものである。
本書の対象は、将来、職業人として健康増進分野に密接に接する栄養士・管理栄養士養成課程のである。また、管理栄養士国家試験受験のための教科書・参考書であり、家政学、生活科学、農学、医療関係の各養成課程に在籍する学生にとっても有益なものである。もちろん、一般社会人の教養書としても役に立つ。

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